環境エネルギー科学特別部門の開講科目

環境エネルギー科学特別部門で開講している講義では、国内外のエネルギー問題の実情を解説するとともに、その第一線で活躍する講師や行政の最前線で政策立案に携わっている講師をゲストに迎え実践的講義を行っています。また、各技術の課題、今後の展望について、さらに電力自由化など今後の社会変化等についても解説しています。当部門の講義を受講する学生は理系と文系半々で、学際的な講義内容となっており、学生との質疑応答も活発に行っています。

2023年度に開講する講義は以下の通りです。

前期課程

「Road to 2050 環境エネルギー政策目標の達成に向けて」 (2023S)
瀬川浩司 教授、小林 光 客員教授、田中 良 客員教授、吉高まり 客員教授、松本真由美 客員准教授
「国際環境エネルギー経済学--2050年カーボンニュートラル実現に向けて」 (2023S)
瀬川浩司 教授、松井英生 客員教授
「Road to 2050 グリーンビジネス概論」 (2023A)
瀬川浩司 教授、小林 光 客員教授、吉高まり 客員教授

後期課程・高度教養科目

「エネルギー科学概論」 (2023A)
瀬川浩司 教授、田中 良 客員教授、松本真由美 客員准教授
「環境エネルギー経済学」 (2023A)
松井英生 客員教授
「環境社会学」 (2023S)
米本昌平 客員教授
 

Road to 2050 環境エネルギー政策目標の達成に向けて

2020年10月わが国は世界に向けて「2050年カーボンニュートラル」を宣言した。その後、2030年には温室効果ガスの排出量を2013年度比でマイナス46%とし、さらに50%の高みに向けて努力する方針を示している。2021年には第6次エネルギー基本計画が策定され、様々な政策が動員されているが、本講義ではこれらの現状と課題について取り上げる。民間でも、ESG投資の広がりやRE100宣言企業の増加に加え、コロナ禍からの回復を見据えたグリーンリカバリーに関する取り組みが広がっているが、「2050年カーボンニュートラル達成」は、そんなにたやすいものではないことも事実である。本自由研究ゼミナールでは、2050年カーボンニュートラルに向けた戦略を議論する。

・現代の地球環境問題
・エネルギー政策の課題と展望
・世界のエネルギー利用の現状
・脱炭素社会に向けた世界のエネルギー政策
・再生可能エネルギー活用の可能性と技術開発
・環境政策の実行
・環境と経済活動との関係
・グリーンファイナンス
 その他

【担当】瀬川浩司 教授、小林 光 客員教授、田中 良 客員教授、吉高まり 客員教授、松本真由美 客員准教授

【期間】2023年度Sセメスター 水曜5限

 

国際環境エネルギー経済学「2050年カーボンニュートラル実現に向けて」(ポスト新型コロナ時代の世界経済社会の状況を左右する脱炭素経済社会の実現に向けての課題と、AI、ロボットに負けない人間力を有する人財を目指して)

 地球温暖化問題が国際社会の大きな課題となっており、我が国は多くの国々と歩調を合わせて2050年に向けてカーボンニュートラル、すなわち脱炭素経済社会を実現するという方針を決定している。
 しかしながら、例えば電力の約76%は石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料によって供給されており、さらに産業界、国民生活においても化石燃料が多く使われており、脱炭素とはこれらをほぼゼロにするというとてつもない大きな目標であります。
 そのためには、様々な燃料転換をしていくことは勿論のこと、経済社会全体システム、ライフスタイル、価値観等の大改革が求められております。
 これらを2050年に向けて実現していくということは、聴講生の皆さんの今後の人生そのものの在り方です。すなわち、2050年に向けて我が国経済社会のリーダーとなって行く皆さんが、どのような経済社会を創造して行くかということにかかっております。そのため、本授業では経済産業省の若手官僚などをゲスト講師として招くなどをして、脱炭素問題に関わる実情と課題をお示しして、質疑応答、グループディスカッションなどを通じて、聴講生の皆さんが自分たちの将来像を主体的に自由に設計して行く手助けをすることとします。また、そのような経済社会の大改革を実現していくためには、リーダーとなる者の資質が問われるわけで、その資質のベースとして最も重要な人間力を磨くためのお手伝いもすることといたします。

 本授業は、新型コロナ禍による未曾有の経済危機に直面している世界情勢の中で、極めて厳しい状況下にあるわが国経済社会が今後発展していくための方途を探ること、特に2050年を目指してカーボンニュートラルを実現していくための課題を分析すること、及び経済社会のあらゆる分野に活用され始めており近い将来において人間の職を奪い去るのではないかと懸念されているAIの躍進の状況下においてAIに負けない人材になるための課題解決能力の向上を図ることを目的としています。
 電気、石油、ガスの三大エネルギーは、経済社会に定着して必要不可欠なものとなっており、現代生活においては、いつでも簡単に使えるものとして空気のような、あって当たり前のような存在になっております。しかし、東日本大震災において、これらエネルギーの経済社会における重要性が再認識されました。すなわち、これらエネルギーが無くなると経済社会は立ち行かなるということです。以降、国を挙げてエネルギー問題の議論がなされて来ております。マスコミなどを通じて表に出ているのは原子力発電の議論が中心に感じられますが、本問題は、わが国経済社会の在り方のみならず、わが国の安全保障問題にも直結する重要課題であり、実際はもっと幅が広くかつ奥が深い議論がなされております。同時に国際的に地球環境問題も重要課題として議論がなされており、再生可能エネルギーの開発が進んでおります。エネルギー問題と地球環境問題は表裏の関係にあり、密接に関連して議論がなされております。一昨年菅政権は、2050年に向けてカーボンニュートラルを実現していく方針を打ち出しましたが、これは我が国経済社会のシステムを抜本的に変革させるものであり、人々のライフスタイル、価値観、文化までも大きく変化させるものであります。この実現に向けて経済社会のあらゆる分野で脱炭素に向けた取り組みが始められましたが、どれも簡単な課題ではなく、総合的に対応していく必要があり、国が国中の英知を集めて将来ビジョンを創り、その具体的実施を官民協力して進めることが必要不可欠であります。
 カーボンニュートラルを実現していくためには、先ずエネルギー問題についての実情を理解することが必要です。エネルギーが無ければ、人々の生活は勿論のこと、経済社会は成り立たないのであり、エネルギーの輸入が貿易収支に大きな影響を与え、更には、エネルギーコストの上昇は、経済社会活動に大きなインパクトを与え、国に発展を左右します。加えて、エネルギー資源獲得競争は、紛争を惹起させたり、国際的軍事情勢に影響を与えるばかりでなく、原子力発電政策のあり様により世界の安全保障問題にも大きな影響を与えます。また、化石燃料によるエネルギーは地球環境問題を引き起こします。
 国際環境エネルギー問題の扱い方如何によって今後の明るい我が国の将来像が見えてくると言っても過言ではないと思います。逆に言えば、国際環境問題に関する取り組みを間違えれば、わが国の先行きを不透明にすると言っても過言ではないと思います。このような難しい課題を内在しているエネルギー問題について、脱炭素、すなわちカーボンニュートラルの実現を目指すということは極めて難しい課題で、エネルギー問題に上手く対応することによってクールでスマートな日本の実現を図っていくことができると思います。
 一方、アメリカのトランプ大統領の出現を契機に、従来正しいと信じられていた新自由主義、グローバリズム、自由貿易といった概念に疑問が呈せられております。アメリカ第一主義の名の下、保護主義的概念が台頭してきております。この背景には様々なものがありますが、一つにはアメリカがシェールガス、シェールオイルの開発生産により、エネルギーの輸入に頼る必要がなくなりエネルギーセキュリティの立場が極めて強固になったことが挙げられます。バイデン政権になり方向性に変化が見られましたが、米国内の政治状況から依然として先行きは不透明であると思います。更に脱炭素関連の技術を巡って中国の台頭が世界経済社会に大きな影響を与えかねない状況になっております。このように今まさにエネルギー情勢等の変化によって世界の経済社会の価値観やルールに大きな変化が起きつつある重要な時期であると思います。
 また現在世界的に蔓延している新型コロナ禍により世界的に経済状況が危機に瀕しており、それを受けて社会状況も差別が台頭するなど観覧が生じており、世界経済社会のブロック化が進展する恐れが出てきています。すなわち新型コロナの感染の拡大を抑えるためだけではなく、今後の新しい感染症の侵入を抑えるとともに他国に依存しない経済社会を志向して世界のブロック化が進む恐れがあると言えます。そのような状況下において各国が自国の経済社会の発展を図るためにはエネルギーの安定的確保が必要不可欠で、今後ますますエネルギー確保をめぐる競争が激化する可能性が高いと思われます。このような厳しい状況下においてカーボンニュートラルを実現していくためには解決すべき課題が山積しております。
 そこで、本講義は、経済社会の帰趨を左右する国際環境エネルギー問題の実情を説明し、近い将来に経済界、官界,政界、学会、マスコミなどにおいて我が国を支えることとなる聴講生が、そのリーダーシップをとるに当たり参考となる考え方の材料を提供することを目的とします。したがって、細かい事象やデータを覚えるのではなく、エネルギーを巡る大きな流れを理解できるよう解説をします。経済産業省においてエネルギー行政の最前線で政策立案に携わっている若手の官僚達を議題に応じて4名程ゲスト講師として迎えて、カーボンニュートラルを実現していくための課題について、再生可能エネルギー政策などの実状と政策立案の裏話などを披露して頂きます。また、わが国トップの再生可能エネルギー関連のスタートアップ企業の経営者の方をゲスト講師として迎えて、民間企業における実業の具体的な内容や大学在学中に起業した苦労話や成功話などを披露して頂きます。
 更にAI、ロボットの進展により人間の仕事がAIなどに置き換わって行く可能性があると危惧されていますが、このような懸念の払拭に資するよう、人間として似コミュニケーション能力や人間らしい判断力、構想力、など人間力を磨くための方途につき解説します。これは、社会に出て活動をするに際に必要不可欠な課題解決能力の向上に役に立つと思います。
 後半の授業において、グループディスカッションをするほか、環境エネルギー問題に限らず聴講生からの様々な質問に答える機会を設けます。
 若手の官僚たちによる、政府における政策立案に際しての裏話などの講義もあることから、文科系、理科系の全ての学生にとって有意義であると考えます。

【担当】瀬川浩司 教授、松井英生 客員教授

【期間】2023年度Sセメスター 木曜3限

 

Road to 2050 グリーンビジネス概論

2050年脱炭素の世界共通目標の下で、環境負荷を減らしつつ収益するグリーンビジネスが、ビジネススタイルの世界標準となった。このビジネスを実践するための基礎技法や発想などを身に着け、グリーンビジネス具体化の人材的な基礎を作る。

前半には、教科書を参照しつつ、社内起業やベンチャー(スタートアップ)の両方の場合を想定し、基礎技法などを学び、中盤では、実際のビジネスパーソンを招いてグリーンビジネスの困難や克服のコツなどを聴取し、最終的に、自らのグリーンビジネス案を構想する。

履修生からの質問に応じて発展させていくインタラクティブな授業と最終的にはピッチ・プレゼンを目指す発信型の学習を行う。

【担当】瀬川浩司 教授、小林 光 客員教授、吉高まり 客員教授

【期間】2023年度Aセメスター 木曜5限

 

エネルギー科学概論

本講義は、エネルギー問題を科学的に理解するための基礎を醸成することを目的とする。

エネルギー科学の概論として、まずエネルギーとは何か、エネルギーの分類、天然資源、再生可能エネルギー、電力などの基礎を学ぶ。天然資源については、資源獲得競争とシェールガスの展望、メタンハイドレートなどを扱う。再生可能エネルギーについては太陽光発電や風力発電などの技術のほか、最新の技術を取り上げる。また、エネルギー問題とコミュニケーション、エネルギー問題の今後の課題等を議論する。最後に、エネルギー安全保障、エネルギー政策などについて取り上げる。

【担当】瀬川浩司 教授、田中 良 客員教授、松本真由美 客員准教授

【期間】2023年度Aセメスター 木曜4限

 

環境エネルギー経済学

「ウクライナ紛争により2050年カーボンニュートラル実現に向けての課題が顕在化」 (ウクライナ紛争により、エネルギー安全保障の重要さが世界的に認識された中で、今後の世界経済社会の状況を左右する脱炭素経済社会の実現に向けての課題と、我々が求める豊かさとは何かを探りながらAI、ロボットに負けない人間力を有する人財を目指すための課題)

本授業は、新型コロナ禍に加え、ウクライナ紛争により未曾有の経済危機に直面している世界情勢の中で、極めて厳しい状況下にあるわが国経済社会が今後発展していくための方途を探ること、特に2050年を目指してカーボンニュートラルを実現していくための課題を分析すること、及び経済社会のあらゆる分野に活用され始めており近い将来において人間の職を奪い去るのではないかと懸念されているAIの躍進の状況下においてAIに負けない人材になるための課題解決能力の向上を図ることを目的としています。
1.電気、石油、ガスの三大エネルギーは、経済社会に定着して必要不可欠なものとなっており、現代生活においては、いつでも簡単に使えるものとして空気のような、あって当たり前のような存在になっております。しかし、東日本大震災において、これらエネルギーの経済社会における重要性が再認識されました。すなわち、これらエネルギーが無くなると経済社会は立ち行かなるということです。以降、国を挙げてエネルギー問題の議論がなされて来ております。マスコミなどを通じて表に出ているのは原子力発電の議論が中心に感じられますが、本問題は、わが国経済社会の在り方のみならず、わが国の安全保障問題にも直結する重要課題であり、実際はもっと幅が広くかつ奥が深い議論がなされております。同時に国際的に地球環境問題も重要課題として議論がなされており、再生可能エネルギーの開発が進んでおります。エネルギー問題と地球環境問題は表裏の関係にあり、密接に関連して議論がなされております。2020年菅政権は、2050年に向けてカーボンニュートラルを実現していく方針を打ち出しましたが、これは我が国経済社会のシステムを抜本的に変革させるものであり、人々のライフスタイル、価値観、文化までも大きく変化させるものであります。この実現に向けて経済社会のあらゆる分野で脱炭素に向けた取り組みが始められましたが、どれも簡単な課題ではなく、総合的に対応していく必要があり、国が国中の英知を集めて将来ビジョンを創り、その具体的実施を官民協力して進めることが必要不可欠であります。
2.カーボンニュートラルを実現していくためには、先ずエネルギー問題についての実情を理解することが必要です。エネルギーが無ければ、人々の生活は勿論のこと、経済社会は成り立たないのであり、エネルギーの輸入が貿易収支に大きな影響を与え、更には、エネルギーコストの上昇は、経済社会活動に大きなインパクトを与え、国に発展を左右します。加えて、エネルギー資源獲得競争は、紛争を惹起させたり、国際的軍事情勢に影響を与えるばかりでなく、原子力発電政策のあり様により世界の安全保障問題にも大きな影響を与えます。また、化石燃料によるエネルギーは地球環境問題を引き起こします。
3.国際環境エネルギー問題の扱い方如何によって今後の明るい我が国の将来像が見えてくると言っても過言ではないと思います。逆に言えば、国際環境問題に関する取り組みを間違えれば、わが国の先行きを不透明にすると言っても過言ではないと思います。このような難しい課題を内在しているエネルギー問題について、脱炭素、すなわちカーボンニュートラルの実現を目指すということは極めて難しい課題で、エネルギー問題に上手く対応することによってクールでスマートな日本の実現を図っていくことができると思います。
4.一方、アメリカのトランプ大統領の出現を契機に、従来正しいと信じられていた新自由主義、グローバリズム、自由貿易といった概念に疑問が呈せられております。アメリカ第一主義の名の下、保護主義的概念が台頭してきております。この背景には様々なものがありますが、一つにはアメリカがシェールガス、シェールオイルの開発生産により、エネルギーの輸入に頼る必要がなくなりエネルギーセキュリティの立場が極めて強固になったことが挙げられます。バイデン政権になり方向性に変化が見られましたが、米国内の政治状況から依然として先行きは不透明であると思います。更に脱炭素関連の技術を巡って中国の台頭が世界経済社会に大きな影響を与えかねない状況になっております。このように今まさにエネルギー情勢等の変化によって世界の経済社会の価値観やルールに大きな変化が起きつつある重要な時期であると思います。
5.また近年世界的に蔓延している新型コロナ禍により世界的に経済状況が危機に瀕しており、それを受けて社会状況も差別が台頭するなど観覧が生じており、世界経済社会のブロック化が進展する恐れが出てきています。そのような状況下において各国が自国の経済社会の発展を図るためにはエネルギーの安定的確保が必要不可欠で、今後ますますエネルギー確保をめぐる競争が激化する可能性が高いと思われます。特にウクライナ紛争を契機にエネルギー安全保障問題の重要性が高まってきており、エネルギー供給減少が我が国経済社会を危機に陥らせております。このような厳しい状況下においてカーボンニュートラルを実現していくためには解決すべき課題が山積しております。
6.そこで、本講義は、経済社会の帰趨を左右する国際環境エネルギー問題の実情を説明し、近い将来に経済界、官界,政界、学会、マスコミなどにおいて我が国を支えることとなる聴講生が、そのリーダーシップをとるに当たり参考となる考え方の材料を提供することを目的とします。したがって、細かい事象やデータを覚えるのではなく、エネルギーを巡る大きな流れを理解できるよう解説をします。経済産業省においてエネルギー行政の最前線で政策立案に携わっている若手の官僚達を議題に応じて4名程ゲスト講師として迎えて、カーボンニュートラルを実現していくための課題について、再生可能エネルギー政策などの実状と政策立案の裏話などを披露して頂きます。また、わが国トップの再生可能エネルギー関連のスタートアップ企業の経営者の方をゲスト講師として迎えて、民間企業における実業の具体的な内容や大学在学中に起業した苦労話や成功話などを披露して頂きます。
7.更にAI、ロボットの進展により人間の仕事がAIなどに置き換わって行く可能性があると危惧されていますが、このような懸念の払拭に資するよう、人間として似コミュニケーション能力や人間らしい判断力、構想力、など人間力を磨くための方途につき解説します。これは、社会に出て活動をするに際に必要不可欠な課題解決能力の向上に役に立つと思います。
8.後半の授業において、グループディスカッションをするほか、環境エネルギー問題に限らず聴講生からの様々な質問に答える機会を設けます。
9.若手の官僚たちによる、政府における政策立案に際しての裏話などの講義もあることから、文科系、理科系の全ての学生にとって有意義であると考えます。

【担当】松井英生 客員教授

【期間】2023年度Aセメスター 金曜3限

 

環境社会学――地球環境問題の科学と政治

過去半世紀にわたる地球環境問題に関して、その科学・政策・国際関係に焦点をあわせ、問題の立体的な構造を俯瞰しながら、日本の課題を展望する。文理融合を意図した講義であり、エネルギー・環境系はもちろん、環境に関する政治・政策・外交に関心を持つ学生に向けた、構成にしてある。
 地球環境問題の特徴の一つは、「真理追究をする科学研究」と「国益の確保とその調整をめざす外交」という、まったく異質の社会的な活動領域が融合してはじめて機能する、21世紀型の課題であることである。授業ではこの側面に焦点を合わせて、「環境外交」の展開とこれにともなう、自然科学の政治的意味や研究体制の変質、および日本の近未来におけるアジア外交を考えようとするものである。関連する国際文書・論文からなる「Readings」を作成し、これについて詳説する。
 本授業の目的の一つは、これによって地球環境問題の国際政治上の意味、さらには文明論上の特性を知り、独力で原資料を集めて考えぬく態度を身につけさせるところにある。

以下のような内容で順次、講義を行い
 1.ガイダンス、2.冷戦とは何であったか  3.欧州における酸性雨外交  4.温暖化問題のアジェンダ化  5.京都議定書と冷戦後の理想主義  6.拡大EUと共通環境政策  7.IPCCの科学と政治  8.「気候安全保障」論と「人新世」概念の登場  9.大国中国の変容と東アジアにおける環境外交の意味 10.まとめ と補論。

【担当】米本昌平 客員教授

【期間】2023年度Sセメスター 金曜3限